年金は掛け損か?

先日あるFPの先生が公的年金の説明をする際に
「稼ぎの中からせっせと積み立てた年金が貰えなくなるなんて、ひどい話ですよねえ」と言っていましたが、これは専門家としては正確ではない発言です。

国民年金や厚生年金など公的年金は国にお金を預けておいて、長期間の積立ての結果として年金を受け取るのではありません。
現役世代が支払っている年金の保険料は年金給付財源という大きな資金中に吸収され、そこから今現在の年金受給者への給付となって出てゆきます。
この仕組みは「世代間扶養」といわれ、保険会社などと契約する個人年金や銀行の定期貯金などとは根本的に違うのです。
年金の保険料を税金方式にしてはどうかという議論もなされていますが、国民年金保険料の扱いは現行の法律上も税金に近いものとなっています。

年金記録不備問題の発覚以来、社会保険庁の不手際ばかりが取りざたされていますが、年金の問題が国民の関心事として浮上している今だからこそ、年金や健康保険制度について、その根本理念の理解から再出発することが必要ではないかと私は思います。

国民年金・厚生年金のみならず健康保険や労災保険雇用保険そのたの制度は日本の社会保障制度の一環です。そしてそれらの運営は「憲法25条」の規定である生存権を守る義務から国が行うものであり、国民の立場としては国民同士の相互協力、共同連帯の精神に基づいて「お互い様」の精神で支えあっている崇高な制度であるのです。
年金問題は時の政権の支持率(人気)を大きく左右する要素であるため、それゆえに常に根本的改善が先送りされてきた事実に私たちは気付くべきです。
まずは、給与明細の中身を理解することから始める必要があると思うのです。